7月映画鑑賞レビュー その2
WAVES ★★★★
プレイリストムービーと言われているらしいが、確かに音楽が良かった、最後のレデイオヘッドにやられた。
スーパーポップでファッショナブルなオープニングからの流れが最高に良かった。
その陽気さと次第にリアルな崩壊へと向かう対比が物凄く良くて、
序盤は凄くカラフル、彼の部屋のカーテンもカラフル、
でもレスリングのシーンは暗い演出になっていて、
なんだか最初から不穏な印象を感じた。
こういう色の感じが、どことなくムーンライトを感じさせるし、
監督があのテレンスマリックの元でアシスタントをしていた、というのも妙に納得できてしまう。
ということで映像はなかなかのもの。
この映画は兄と妹の対比になっているのだけど、
ものすごーーく単純に言えば、
兄が壊し妹が直すんだけど、
ただ単純に、ハッピーエンド感が出なかったところが良かったと思う。
俗に言う、言われてるか知らんけど、ベターエンド。
妹にはハッピーになって欲しくてしょうがないけど。
さすがにあんな経験はしてないけど、兄の気持ちって分からなくはない、
あの時のロッカールームでの父親の態度が全て。
みんな愛を求めてるのに、
それを上手く表現できなかったり隠したり強がったり。
父と娘のように、どこかで吐き出さないといけないんだろうな…と、
泣きそうになった。
そして!
This is usのランダル出てる!出世しましたね。
ヘイト・ユー・ギブ ★★★
2009年に実際に起こった黒人少年射殺事件を元にして
2017年に発表された小説を
2018年に映画化したもの。
で、今2020年。
この2009年の事件のことは覚えていないのだけど、
内容は2020年のそれと全く同じ。
全く同じことが何度も何度も繰り返されるのは
描かれていた白人の友達の姿勢なのだろうと思う。
やはり自分とは遠い世界で起こっていることとしか受け取れないのだろうと。
まぁあの友人はちょっとあれだけど…。
黒人の警官である叔父でも、
「同じ状況だったら発砲する、白人ならしない」的なことを言っていたのは、
彼が警官として、危険度を判断しているからで、
それはやはりこの問題の根底が社会問題であること(黒人の犯罪率が高い(という事実と、そう思われている)こと)。
それはなぜか、ということを考えて直していかないと改善しない。
だけど、2020年現在、
BLMでデモ行進する人々をライフルを持った白人達(一般人)が歩道に並んで威嚇してい
る映像に度肝を抜かれた。
顔も隠さず、そんなことができるんだ、と。
それが黒人だったら????
あの友達よりも頭おかしい人が平気で銃を持ってる国。
ライフル協会を支持し差別をする大統領が治める国の姿。
表面上は治まっても、本質的には無くならないんだろうな、と思う。
この映画は、主人公の白人の友人、彼氏を通して
あなた達は本当に分かってるの??ってことを常に言ってるわけで、
我々日本人にはかなり痛い映画。
運び屋 ★★
家族を省みなかった老人が
善悪を省みず麻薬を運び
最後まで家族をないがしろにするという
不器用な男というものは哀しいものですね、
という映画。
にしたかったのだろうか。
でも僕には何も感じられなくて、だらだらとした映画だった。
主人公はところどころ魅力的で肯定的に描かれてもいるけど、
この主人公が仮にイーストウッドでないことを想像してほしい。
完全にどうしようもないだめ人間である。
が、イーストウッドが演じる事で完全な悪人ではなくなる、
むしろ魅力的な人間に映ることは本人もさすがに自覚してるだろう(分かってないもしくは悪人を演じられていると思っているのであれば俳優として大問題だ!)。
彼はもはや自分を越える役はできない(どんな役をやってもイーストウッドなんだよってこと。トムクルーズと同じ)。
だから、
なぜこのテーマを映画に選び、自らが出演したのか?
本当にこの話の何かを描きたければ主演は自分ではないはず、
主人公を「いい人」にしたい場合以外。
無実の黒人は射殺するのに運び屋の白人は荷物すら調べない警官へのあてつけ??
残念ながらイーストウッドはそういう人ではなさそうですが(笑)