3月映画鑑賞レビュー
NOMADLAND ★★★
出演者が本当のノマドの人たちとは、驚き。
よく集まったもんだ、これも期間就業か…
昨今の日本でノマドワーカーと言えば、かっこいい、おしゃれ、くらい印象でもあるが、本当のノマド、それは過酷な話だ。
でもこの映画はそう悲観的には描いていないし、
すごくドラマチックな事が起こる訳でもない。
でもその中に、過酷さを感じる何かはある。
特に家族との描写。
きっと彼女は恵まれている方なんだけど、
ホーム、ハウスを持つ人たちの会話の端々につっかかりたくなる、
それは自分の生き方を肯定している、
しないと生きていけないと思ってるからだと思う。
それは辛い。
あんな自然と共に生きる生活もいいな、
なんて軽く言えないことが伝わってくるよい脚本だと思う。
賞取る系女優マクドーマンドはやはりさすがである。
お尻出すなんて朝飯前。
感情を抑えた演技の中に強さがほとばしる。
アマゾンとか、こういう人達を労働力として宛にしている、
なんだかなぁ…という気持ちになる。
お互いフィットしてはいるんだろうけど、
もっと何かないのかな…と思ったり。
闇とまではいかないけど、なんだかなぁ、なアメリカの姿。
アメリカが舞台だから、我々からは少し距離があるし
広大な自然をバックにしてそれが緩衝材になっているのだけど
これを日本に置き換えるとゲロ吐きそうである。
ゴールデングローブ賞受賞、
アカデミー賞作品賞最有力。
マクドーマンドは女優賞獲るでしょう。
SOUND OF METAL ★★★
自然な流れで、主人公の心情がよく伝わってきたよい映画だった。
特に最後の、ルーとのシーンは良かった。
説明せずとも伝わること、
映画の中の二人もお互いに伝わっていること。
手術をしてから最後のあのシーンまでのルーベンの決心までの心のざわつきが
人工内耳を通して聞こえる音に表されていてよく分かった。
音の聞こえないことを題材にした映画の場合、
無音シーンを使うのは定石と思うけど、
分かってはいるんだけどそれは思いの外効果的。
映画っていろんな音が入っててできてるんだな…と。
この映画はそこに機械的な音、メタル音、が混じっていて、
オンオフでは無い感を感じられた新しい感覚。
アカデミー賞作品賞にノミネートされている。
アマゾンオリジナルも一つ成果を出した。
THE REPORT ★★★
これもアマゾンオリジナル。
挑戦的な作品を作ってきている。
tortureという単語が黒塗りされるオープニング。
いつか日本でも一面黒塗りの書面が出てたような。
凄い映画であり凄い事実。
こういうコメントは何回もしたことがあるが、
こういう映画を作れるアメリカはやはりすごい。amazonすごい。
まぁ事実が公表されているのだから、いいのかもしれないけど、圧倒的にCIA批判だから。
終始緊迫感が半端なかった。
この手の映画は緊迫感あるものが多いが、その中でも良作と言えそう。
アダムドライバーが非常に良かった。
無表情で、劇中一回も笑顔無かったんじゃないか?
静かな外見と、しかしその表情に頭の中ではむちゃくちゃ怒ってることが分かるのが良かった。
こういう記者物とか、内部調査により告発する系の映画って、
「調べる」っていう過程を描くから映像としては地味、
あるとすれば脅されて危険になるとか?
この映画では、大人しく根暗な印象のアダムドライバーが
議員やいろんな人に意見を感情的にぶちまけることで
映画の中に動を作っていたように思う。
あまりアダムドライバーのイメージって無かったけど、
こういう感じのを見ると、いいな、と思う。
「米国は自らの過ちを認められ、それから学べる大国であることを…世界に伝えられる」
このスピーチは感動的だ。
でもその後発足したのがトランプ政権とは皮肉なものだ。
日本の政治家にも、このくらい命をかけて暗部を公表する気概を見せてほしい。